2013/01/17

4HP22 バルブボディ修理 Part1 (ValveBody Repair)



先月の事ですが、旧車オーナー仲間から友人でATに不具合が発生した人が居るので助けて欲しいと緊急連絡がありました。


その人はE34-535を所有していたようですが奥様がショッピング先で車両がリバースに入らなくなり動けなくなったそうです。 その場で対処方法を聞いてこられたので、とにかく無理に動かさないようにアドバイスし、ロードサービス等を呼んでローダーで自宅に運んでもらったほうが良いと伝えました。


ATに不調が生じて3速固定やリバースに入らなくなると気持ち的にはエンジン回転を上げて油圧を上げると回復しそうな雰囲気になるのですが、以前私はそれらの操作を無理に行って結果的にATをオシャカにした経験上、異常を検知したら出来るだけ早急に点検やオーバーホールをするのが望ましいと周囲の人にお話ししています。

幸いこのオーナーさんも加入していた保険のロードサービスが使えたようなので一旦自宅まで車両を運んで貰い何とか車庫まで戻す事ができました。 お世話になっている整備工場に相談をしたところATの修理は専門外で主なところに頼むとやはり30万円 (over $3,000.00) 以上掛かるだろうとの回答があり何とかなるでしょうかと友人から私らの噂を聞いて相談に来られました。

友人達のチームでいつも整備をしているのはE32ベースなのでZF製の4HP22や4HP24になります、535に搭載されているATは世代によりZFとJATOCOがあるようですが、該当車両には4HP22が搭載されているとの事です。 4HP22と4HP24はAT本体のクラッチ容量やハウジングは大きく異なりますがバルブボディに関しては極めて酷似していて見分けるのが難しいくらいです、なのでオーバーホール手順や構造的な分析は殆ど問題がありません。


問題はAT損傷の程度です、AT障害の初期的な兆候として「Transprogramの多発」「シフトショックの増大」「シフトの遅れ」「リバースの作動不良」といった事が見受けられますが、これらの障害が起きたときに無理をしてクラッチプレートそのものにダメージを負ってしまうとバルブボディの補修だけでは無くAT本体を降ろす必要があり修理は極めて困難になります。


オーナー自身が指示通り障害時に無理な運行をしておらずクラッチに損傷が無ければ少しの手間で直る確率は格段に向上しますがこればかりは実際の状態を開けてみるまで判断ができません。 修理を行うにしても現地で行うにはかなり無理があるので車両を運ばなければなりません、修理保障は出来ない事と車両を持ち込んで貰う事を条件に依頼を受ける事にしました。

初回の検証点検と暫定処置

当日は車両の運行が可能との事で該当車両を運転してガレージまで来て頂きました。 ATを開けてみると最も懸念されたクラッチが損傷した残骸はオイルパン内に見られず、これならとりあえずバルブボディの仮洗浄だけやりましょうと作業を行います。  


障害の連絡を受けてから翌日直ぐの対応なので今回洗浄に十分なATFが手元にありません、ガレージ在庫分は4L程度でバルブボディを降ろして組むのに必要な7Lすらありませんから仕方なく抜いた古いATFをフィルタで濾して使います。  


バルブボディの状態はこれまで見た車両の中でもスラッジの堆積がかなり酷い部類です、オーナーさんの話では半年前に整備工場でATFの交換をしてもらったそうですが、20年以上経過した車両は単純なATF交換だけではこれらの汚れを落とすことはできません。 


広く一般にATFを交換したらATが壊れると都市伝説のように語られるのは適切な洗浄と交換をしないからです、ATFが十分にあれば今回で問題は解決できたと思うのですが、まーとりあえず何とか解決はできました。