2012/09/09

遮音断熱ガラスの導入 Double Glass Window Install Guide

海外サイトで750の遮音断熱ガラス(通称:Sound absorbing glass)のインストールについて問い合わせがありましたので、以前B12の前後ドアに導入したときの手順や問題点を記述します。

750には通常他の車両と同じ3mm厚の安全ドアガラスが使われています、これらは国産車と同じ仕様のもので厚みや強度は殆ど変わりません。 近年の車両にはガラスに鉛の粒子を混ぜた断熱ガラス仕様のものもありますが、この頃にはそうしたものが無かったためBMWではフロントウィンドウやリアウィンドウと同じように樹脂層を2枚のガラスでサンドイッチ構造にした遮音断熱ガラスが最終型のモデルで使用されました。

このガラスは前述のように3mm厚のガラス2枚の中に同じ3mm厚の断熱樹脂材をサンドイッチ構造にして作られており、ガラスの厚みは9mmとサイドウィンドウとしてはかなりの厚みになっています。(国内では一般的に合わせガラスとして知られており、フロントウィンドウにのみ使われています)

コインならばウィンドウガイドに5枚も収まる程の厚みで、どれほど厚いか想像できると思います


最終型の車両の場合はフロントウィンドウからリアウィンドウに至るまで、これと同じ規格のガラスが使われています、以前に乗っていた750はこの仕様でしたがB12は通常のシングルガラスです。


【交換によるメリット】

断熱性と遮音性の向上

このガラスの一番のメリットは断熱性と遮音性であり一部の人が勘違いする防弾性能等はありません(笑)、実際防弾仕様の750も当時からありますがそのウィンドウは7cm近い厚みとウィンドウの重量が75kgもあります。

夏場のエアコンや冬場のヒーター稼動時に断熱性能の恩恵を感じる事ができます、遮音性能はV12の場合エンジン自体がスムーズで静かなのですがこのウィンドウにすると更に静かになりエンジンサウンドやエグゾーストサウンドを楽しみたい人には物足りなくなります。

安全面の向上

それともう一つのメリットと言えば安全面の向上です、このウィンドウにはフロントウィンドウと同じく飛散防止フィルムが中間膜にあるためハンマー等でガラスを割られてもヒビが入るだけで貫通もしません。 最近の車両にはサイドエアバッグが標準装備されていますが、横方向からの車両衝突時にガラスが飛散しないのは乗員保護の貢献度が高いと言えます。

【交換によるデメリット】

重量の増加

ガラスの交換には当然ながらデメリットもあります。 前後左右ドアのみの交換とは言ってもそれぞれのウィンドウによる重量増は相当なものです、ウィンドウを駆動するレギュレータはどちらも共通なのでこのウィンドウを駆動するにはかなりの負荷が掛かります。 以前の750では負荷でレギュレータのギアが欠けてしまうトラブルが出た程です。


関係部品の入手

ウィンドウ交換に伴う多くの付属部品の交換が必要になります。 ウィンドウの厚みが違うということは内張り周辺のガイドはもちろんウェザーストリップや各種内装パーツも交換する羽目になります。

緊急脱出に不利

自然災害や事故により車両が水没した場合などに車内からの脱出が難しくなります。 シングルウィンドウの場合は脱出用ハンマー等で簡単に車内からガラスを割ることができますが、ダブルウィンドウはフロントウィンドウと同じなのでハンマーでヒビを入れることは出来ても破るのは非常に困難です。
このウィンドウに換える場合はこの点について十分に注意する必要があります。





【重要】 

シングルウィンドウからダブルウィンドウに仕様変更をする予定のオーナーさんは作業に関して全て自己責任で行なうようにお願いします。  

ドアのガラスを換える場合は三角窓のウィンドウも同時交換が必要になります、これはウェザーストリップが標準窓と三角窓全てに繋がっているためで交換するときには適合するウェザーストリップと全てのガラスが揃っている必要があります。

ガラスの交換には多数の適合パーツが必要となりますが、これらは既に生産終了となっていて入手は不可能です。 幸い私は殆どの部品を部品車から移植できましたが、ガラスだけを入手したオーナーさんには上記の理由から移植はお勧めしません。




では、後席ドアを参考に手順を追ってみて見ましょう


 ウッドパネルを外します
 パネルはクリップで留まっています
 1992年製のオリジナルのままです
 内張りを留めているボルトを緩めます
こちらのボルトも緩めます
 ロックレバーキャップを外します
 ロックレバーが出た状態
 下側のランプカバーを外します
 カバー上下の爪で留まってます
 足元灯です、私のはカスタム仕様のLED基盤が実装されています
足元灯ごと抜き取ります
 内張りは手前に強く引けば外れます
 ウィンドウスイッチとロックレバーが繋がっています
コネクタとリンクを外します
 内張りが外れました
 ウィンドウレギュレータが見えます
 ガラスを外すためにスライドレールのロックピンを外しておきます
モールはガラスを外す際に邪魔なので外します
 車内側のガイドも外します
 固定用クリップに爪があるのでドライバー等で丁寧に処置して下さい
ガイドが取れました
 残ったクリップ
 クリップの外し方
別のドライバで押し上げれば取れます
 もとはこんな風についてました(下から見た状態)
 横から見た状態
ガイドと平行に見た状態
ガラスを取り出したらドアパネル周囲にあるウェザーストリップも全て取り外します、ドアパネルの外側にある化粧板も全て取り外すことになります。 シングルウィンドウは比較的容易に取り出し可能ですがダブルウィンドウは厚みがありスペースがあまり無いのでインストールするときには十分注意して下さい。

シングル仕様の三角窓は外側からマイナスドライバで窓枠のクリップを押せば取り外しできますが、ダブル仕様の三角窓を他の車両から取り外すときは隙間が狭いので細いマイナスドライバで十分に注意しながらクリップをリリースして下さい。

三角窓のインストール時は先にウェザーストリップを全て取り付けたほうが後からウェザーストリップを隙間に押し込むよりも楽です。 但し三角窓のインストールには相当な力が必要なのでガラスを割らないように注意して下さい。

 ブラインド付きドアパネル
ブラインド無しの通常タイプ

 車内側ガイドの違い(1)
 車内側ガイドの違い(2)
 車内側クリップの種類
ドアパネル内ガイドの違い

 必要部品1
必要部品表1
必要部品2
 必要部品2
 必要部品3
必要部品表3


とりあえず上手くインストール出来たとして、問題はウィンドウの調整です(--; これが意外と厄介でウェザーストリップやガイドに少しでもずれがあるとこんな事になりウィンドウの開閉が出来なくなりますのでご注意下さい。

私の車両も少しずれてますが、これを修正するにはまた三角窓を解体してウェザーストリップから再調整する必要があります。 面倒なので放置してますが・・・・